日本神経学会 residentホームページ

パーキンソン病の発症前診断は、AIと睡眠時呼吸シグナルモニターにより、自宅で可能になるかも?

Artificial intelligence-enabled detection and assessment of Parkinson’s disease using nocturnal breathing signals. Nature Medicine


Nat Med. 2022 Oct;28(10):2207-2215.より改変

パーキンソン病(PD)は全世界的に患者数が増加しており、PDパンデミックと言われます。治療は対症療法にとどまる難治性神経変性疾患の代表ですが、できるだけ早期診断・介入することで予後を改善する可能性が期待されています。

PDの運動症状が出現する以前より、便秘や嗅覚障害、立ちくらみなどの自律神経障害がみられますが、明白な早期臨床バイオマーカーはまだありません。最近有力かつ、特異的な早期臨床バイオマーカーとして、REM期睡眠行動障害が注目されています。しかし、診断には睡眠ポリグラフを用いてREM期睡眠脳波で筋活動の抑制がないことを証明する必要があり、 症状のない患者でも入院して検査を行う煩わしさがあります。

近年、自宅で呼吸ベルトを装着してもらうだけで、呼吸リズム信号がwirelessに送信されAIに解析させると、PDになるリスクはどうか?さらにPDをすでに発症していてもその重症度はどのくらいか?を診断できるシステムが米国のMayo ClinicやMGH, Udall, MITなどで開発されています。

AIの技術が進んで、正確な予測診断が可能になるのは大変良いことですが、AIは誤診しても責任は取ってくれません。PDの診断にはもちろん専門医の総合的な判断、経験、技術、知識が求められます。個人的には、AIの情報はうまく利用しつつもあくまで参考にとどめ、最終的な判断を下す責任を負うだけの専門性を有する神経内科専門医の重要性がむしろ今後ますます高まるだろうと思います。

文責:マッキー