Brain Machine Interface(BMI)は未来の魔法の杖?
Walking naturally after spinal cord injury using a brain-spine interface. Nature.
現代に生きる私たちは、IT技術の恩恵にどっぷりつかって暮らしていますが、多くの神経難病の患者さんにとっても、これらの技術はかかせないものになっています。たとえば、声をだすことができない患者さんとのコミュニケーションには、スマホの文字入力が大活躍します。手の力が弱く、字を書くことが難しい方でも、タブレットを用いれば、比較的簡単に文章を紡ぐことができる場合があります。体がほとんど動かなくなっても、視線入力装置を使えば、自分の意見を自由に発信することができます。自分の声を保存しておけば、声を失っても、自分の作った文章を、自分の声で読み上げることができます。ひとりででかけることができなくても、インターネットを通じ世界中の人とコミュニケーションをとることが可能です。こういった便利なアプリケーションはいまや、特殊なものではなく、だれでも簡単に利用することができるのが今の時代です。
これらの技術の発展により、新しい治療の可能性も広がっています。私たちの生体信号は、電気信号を用いて伝達されています。脳の微小な電気信号をひろい、それを外部機器に伝えるBrain Machine Interface(BMI)という技術は、AIの進歩により、今後飛躍的に発展することが期待されています。患者さんの脳からひろった信号を、脊髄に埋め込んだデバイスにとばすことにより、脊髄損傷のため歩くことができない患者さんが歩くことができるようになったという事例がすでに報告されています1)。この技術が発展すれば、腕を動かすことができない患者さんが、ロボットアームを自分の手のように自在に動かすということも可能になるかもしれません。テクノロジーの力で、身体的なハンディキャップを小さく、あるいは消失させることができる未来。魔法のようだとおもいませんか?こういった未来がすぐそこまで来ているかもしれません。(文責:ちえ)
1)Lorach H. et al. Walking naturally after spinal cord injury using a brain-spine interface. Nature. 618:126-133, 2023.