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脳神経内科の未来:AIによる脳波解析の革新

 近年、医療分野での人工知能(AI)の進歩は目覚ましく、脳神経内科分野も例外ではありません。Jesper Tveit氏らの研究では、AIを用いて脳波(Electroencephalography: EEG)の解析が人間の専門家と同等の精度で達成できたことを示しています。

Automated Interpretation of Clinical Electroencephalograms Using Artificial Intelligence. JAMA Neurol 2023

 従来、脳波解析は高度な専門知識を必要とし、時間もかかる作業でした。筆者自身も脳波検査の判読には日々苦心しています。何より、限られた外来診療時間内で、てんかん性疾患を疑う患者さんの脳波を的確に読むことが求められるのですから。しかし、AIを導入すると、その圧倒的な速度と精度によって従来の手法では数時間かかる解析が数分で完了します。これは、特に緊急を要する神経疾患の診断において、非常に価値のある改善です。そして、脳波解析の自動化により、脳神経内科医はより多くの患者に対応できるようになり、解析の精度が向上することで、より的確な診断が可能になり、患者の治療成績を大きく改善させるでしょう。さらに、神経疾患の新しいバイオマーカーや治療法の発見にも貢献することが期待できます。他分野では既にAI医療機器が次々とFDA承認を受けており、近い将来、脳神経内科分野でもAI機器が診療に導入されるでしょう。
 しかし、技術の進歩は、それに伴う倫理的・法的な問題も引き起こします。AIが患者のプライバシーをどのように保護するか、また、AIによる診断の責任は誰にあるのかといった問題です。これらは、未来の医療者である皆さんが考えるべき重要なテーマです。
 この分野の進歩は止まることがありません。皆さんがその一翼を担い、AIという新しい技術を駆使して、脳神経内科の未来を切り開くことを期待しています。(文責 ちかりん)