筋萎縮性側索硬化症治療の今後:治療薬開発と早期診断の両輪で!
筋萎縮性側索硬化症(ALS)に対する高用量メチルコバラミン(ビタミンB12)が2024年1月に薬事承認を申請されました。
メチルコバラミンは既に「末梢性神経障害」と「ビタミンB12欠乏による巨赤芽球性貧血」に保険適用がありますが、今回は新たに高用量メチルコバラミン(末梢性神経障害で用いる100倍量を週2回筋肉内投与)としての承認申請となりました。
以前に企業が発症3年以内のALS患者を対象に実施した治験では、安全性は確認できたものの有効性は確認できませんでした。しかし、その部分解析では、発症1年以内の患者では投与16週目からプラセボに比し実薬で機能評価スケール(ALSFRS-R)が改善し、生存期間も中央値で600日以上延長していました。その結果を受け、徳島大学を主幹とするチームが発症1年以内の患者を対象に医師主導治験を実施し、投与16週目でのALSFRS-R改善の検証に成功し、承認申請にこぎつけました。
このように、ALSの治療開発ではいかに早く診断するかが重要です。そのために今後期待されるのが筋超音波です。
ALSの下位運動ニューロン障害を確認する検査としては筋電図が最も有用ですが、近年はALSの早期から認める線維束性収縮の確認に筋超音波が用いられることが増えています。この論文では、筋超音波では ALS の超早期から線維束性収縮が豊富に存在すること、腹直筋を含む 8 筋からなる診断モデルが、評価できる身体領域の数(なるべく多い領域数)と簡便さ(なるべく少ない筋数)のバランスにもっとも優れていることを示しました。今後は、健常者でも認める良性の線維束性収縮をALSのそれと識別することが、より早期の診断に役立つようになるでしょう。そのためには、AIの活用や医工学的なアプローチが必要になるでしょう。
様々なアプローチによるALS治療薬の開発と超早期あるいは発症前診断を組み合わせることにより、皆さんの力でそう遠くない未来に根本的治療が実現されることを期待しています。
(文責:坊さん)