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「目の前の患者さんから、世界中の患者さん、未来の患者さんへ」

 私たちはなぜ研究をするのでしょうか?
 大学院に入学し、初めて「研究」と言うものに触れるようになった時には、実は見えていませんでした。
 大学院を修了し、「医薬品開発」に繋がる仕事に参画した時に初めて、目の前の患者さんだけではなく、離れたところにいる患者さんへも貢献できるのが「研究」なのだと、実感することができました。
 一方で、日本の経済成長は鈍り、研究へ配分される国の予算も非常に限られるようになりました。これからの時代、私たちはどのように世界と伍して行けばよいのか?臨床研究医にとっての答えの一つは、多施設共同による症例レジストリへのデータと生体試料の蓄積の活用です。我が国では、1.2億人という大規模な人口が国民皆保険というシステムでカバーされており、質の高いデータや試料を収集する上で、世界的にも恵まれた条件があります。脳神経内科領域にも様々なレジストリが構築・運営されています。国内の環境の厳しさにめげず、協働して集めたデータ・試料から、多くの論文を公表し、世界中の患者さんの役に立っていくことは、私たちが目指すべき大切な目標の一つです。
 一方で現在、ドラッグ・ロスと言う現象が問題となりつつあります。現時点の脳神経内科領域においては、本当に必要な新規治療が入ってこないという状況は、まだ生じていないように認識しています。しかし、人口、経済力などの要因から、状況は次第に悪化する可能性があります。未来の日本の患者さんへ、医学の進歩をこれからもタイムリーに届けるにはどうすればよいか?研究力において無視できない存在感を発揮し、国際共同治験へ参画できるよう努めること、参画した治験で役割を果たし、時にリーダーシップを発揮することが求められます。
 脳神経内科疾患が治療できる時代になり、しばらく経ちました。これから益々多くの疾患が治せる、克服できる時代を迎えます。その素晴らしい時代において、世界中の患者さんへ貢献できる仕事、日本の患者さんへ新規治療をいち早く届ける仕事を、一緒にしませんか?
キーワード:レジストリ、ドラッグ・ロス、医薬品開発、新規治療、国際共同治験
(文責:ピーナッツ畑の深爪)