脳神経内科医は人生100年時代のwell beingを担う
人生100年時代がまもなく到来すると言われていますが、わが国の医療では何が求められるでしょうか?わが国は高齢化社会が顕著となり、出生数減少とともに人口は減少していき、高齢者の割合が多くなりますので、高齢者が医療対象の主体となります。疾病については、日本人の死因で老衰の増加が近年著しく、さらに、後期高齢者で最も増加しているのが認知症であり、介護が必要な疾病の第一位になっています。その認知症の中でも増えているのが、神経変性の病態で発症する、アルツハイマー病やレビー小体型認知症、パーキンソン病です。よって、そのような背景で社会から求められるのは、高齢者および認知症(特に神経変性疾患)への医療に貢献する医師です。また、人生が永くなることより、人生の幸福と充実が重要視され、身体的・精神的・社会的に健康であるwell beingに貢献する医師が求められるでしょう。それらを最も担うことができるのは脳神経内科医だと私は思います。
脳神経内科では問診と診察が他の診療科よりも重点がおかれ、患者さんをよく診る診療を行います。また、脳神経内科の診療範囲は幅広く、身体症状から認知・精神症状まで診療します。よって、脳神経内科では、普段から患者さんの身体的・精神的・社会的問題を総合的に診る診療を行っています。現在、高齢者のフレイル(老化による身体機能低下)が、疾病予防の観点で重要視されていますが、その病態に脳の老化が関わっていることがわかっており、特にフレイル歩行機能低下はアルツハイマー病などの認知症の病態と関連します。現在は、血液および神経画像検査が、認知症および神経変性疾患の診断バイオマーカーとして確立しつつありますので、いずれ脳の老化とフレイルを診断する診察法や診断バイオマーカーが確立されると期待されます。将来の脳神経内科の診療では、フレイルの診断と改善による高齢者の認知症などの疾病発症予防も行うようになり、わが国のwell beingにますます貢献する医療を発展させるでしょう。
参考文献:Annweiler C, Beauchet O, Celle S, et al. Contribution of brain imaging to the understanding of gait disorders in Alzheimer's disease: a systematic review. Am J Alzheimers Dis Other Demen. 2012; 27: 371-80.
文責:やす