認知症とてんかんのただならぬ関係~それは神経過興奮~

(イメージ図:筆者作成)
脳神経内科の外来でよく出会う病気といえば? 認知症、なかでも筆頭のアルツハイマー病(AD)、そしててんかんは、いずれも超高齢社会で増え続けるcommon diseaseです。一見まったく別の病気に見えるこの二つ、実はただならぬ関係にあります。
最新の報告によれば、ADの約6割がてんかん発作、あるいは発作を伴わない潜在性のてんかん性放電を示し、逆に高齢で新たに発症したてんかんは、その後の認知症リスクを高めます(文献1)。つまり両者は双方向性に影響し合っているのです(文献2)。高齢発症の原因不明てんかん(late-onset epilepsy of unknown etiology:LOUE)は高齢発症てんかんの約1/3を占め、その一部はADの「入口」かもしれません。
鍵となるのが神経過興奮です。AD初期にはアミロイドβやタウの影響でシナプスの興奮性が高まり、海馬が過活動になります。その最たる表現型がてんかん性放電です。記憶の要である海馬を擁する側頭葉に、とくにノンレム睡眠中、臨床症状のないsilent spikeとして現れ、AD初期(前駆期)の20〜40%にみられます。不思議なことに、左、すなわち言語優位半球に多いのです。なぜ左なのか、その謎はまだ解けていません。しかも、記憶を固定するはずの睡眠中にこそ過興奮が顔を出し、認知機能低下を加速させることがわかってきました。
では、この過興奮を抑えれば病気の進行を遅らせられるのでしょうか。低用量レベチラセタムなど抗てんかん発作薬の臨床試験が進行中で、原因不明の高齢発症てんかんは抗てんかん発作薬への反応が良いこともわかってきました。血液バイオマーカーと脳波を組み合わせた縦断研究も始まっています。抗アミロイド抗体の時代、発作の見逃しはこれまで以上に重大です。
脳波は古い検査と思われがちですが、目に見えない過興奮を捉える最前線の武器です。認知症とてんかんの境界線上に、若い皆さんが切り拓く未来の脳神経内科があります。我が国から世界へ、一緒に発信しましょう。
参考文献
1) Vossel K, Johnson EL, Cretin B, Matsumoto R. Epileptic activity in Alzheimer's disease: emerging insights and therapeutic implications. Lancet Neurol 2026; 25: 294–307.(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41581519/)
2) Kamondi A, Grigg-Damberger M, Löscher W, Tanila H, Horvath AA. Epilepsy and epileptiform activity in late-onset Alzheimer disease: clinical and pathophysiological advances, gaps and conundrums. Nat Rev Neurol 2024; 20: 162–82.(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38356056/)
(文責 ricky)