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「様々な分野のエキスパートに!」

徳島大学病院 脳神経内科

 当教室は初代教授である梶 龍兒によって開設され、現在は後任として和泉 唯信が就任し、医局員と共に“erstens Bett!”(何をおいても患者さんのことを第一に考えよ)を教室モットーとして、「治る脳神経内科」の実現に取り組んでいます。

〇診療
 神経疾患は多岐にわたり、Common diseaseとされる脳血管障害、認知症、頭痛、てんかん、その他に変性疾患、免疫疾患、末梢神経疾患、筋疾患、感染症などが主な領域です。

・脳血管障害
 全国的にも先駆けて脳卒中センターを開設し、脳神経外科と共に包括的な治療を行っています。年々血行再建術の施行数は増加してきており、一昨年までは1年間に40-50例で推移していましたが、昨年度は72例まで増加しました。動脈瘤や硬膜動静脈瘻の治療も脳神経内科医のみで治療する機会も増えており、脳神経血管内治療研修も可能です。脳卒中・心臓病等総合支援センターも設置されており、様々な啓発活動、患者様への支援にも取り組んでいます。

・認知症
 教室発足以来、診断困難例の対応、治験などに取り組んできました。2024年4月からはMCI(軽度認知障害)・認知症外来を開設し抗アミロイド抗体薬投与をスムーズに行える体制を整えました。認知症専門医の取得のための研修も可能です。

・てんかん
 てんかんセンターがあり、脳神経外科、小児科、精神神経科と共に診療、社会支援などに取り組んでいます。日本てんかん学会認定研修施設、日本臨床神経生理学会教育施設(脳波部門)、日本てんかん学会認定包括的てんかん専門医療施設、徳島県てんかん支援拠点病院の認定も受けており、てんかんの包括的な診療・治療、それに対する知識や技能の修得、若手医師および関連病院の医師を育成する役割を果たしています。

・運動異常症
 Japan Dystonia Consortiumを取りまとめており、全国から、様々な患者さんの相談が集まってきます。患者さんのビデオを用いた多施設間ミーティングも定期的に行っており、様々な運動異常症の知識が得られます。

・変性疾患
 筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病、脊髄小脳変性症・多系統萎縮症などの患者さんが多く、特にALSは全国各地から来院されています。様々な治験を継続して行っています。

・免疫疾患
 近年治療の進歩が著しい神経免疫疾患では、標準的治療のみならず個々の患者さん毎により良い治療を提供できるように心がけています。徳島大学病院では様々な疾患を診る機会があるので、多発性硬化症、ギラン・バレー症候群からStiff-person症候群といった希少疾患まで幅広い症例を経験できます。

・末梢神経疾患、筋疾患
 電気生理検査のスペシャリストが在籍し、日常診る診る機会の多い、しびれ、痛み、筋力低下などの高位診断や病態診断が可能です。日本臨床神経生理学会筋電図・脳波分野教育認定施設であり、軸索興奮特性評価法などの専門的内容や神経筋超音波を用いた観察研究手法も身につけることができます。また、神経、筋病理検査も数多く行っており、総合的な診断、それに続く治療を行っています。是非見学にお越しください。

〇教育
 外来やベッドサイドでの実地教育を丁寧に行っています。若手も学会発表に積極的に取り組み、神経学会地方会の若手奨励賞受賞や、全国学会での受賞者も多く在籍しています。またNeurology Grand Round(NGR)で定期的に著名な外部講師をお招きし最先端の知見を得ています。また、実際のカテーテルやX線装置を用いて、研修医や学生に対してハンズオンを行って血管内治療の理解を深めています。

★カテーテルを使って血管内治療のハンズオン実習

★Neurology Grand Round(日本医科大学 脳神経内科 木村和美先生)

脳神経外科の先生にも来ていただき、木村先生のご講演を拝聴しました。

〇研究
 ALS、運動異常症、脳卒中、神経生理、神経免疫などの研究を行っています。各分野で国内・海外留学経験者も多く在籍しています。

【ALS】
 より強力な治療薬を開発するためにTokushima ALS Researchとして神経画像、神経生理、バイオマーカー、病理、遺伝子、iPS細胞などを対象に研究しています。医師主導治験を実施し、2022年には新規治療として高用量メチルコバラミン(ビタミンB12)の有効性をJAMA Neurologyに報告しました。高用量メチルコバラミンは現在エーザイ社が承認申請中です。

★ALSに対する高用量メチルコバラミンの成果発表

【運動異常症】
 ジストニアを中心とした不随意運動全般の診療・研究を教室開設以来続けています。不随意運動の診療トレーニングが可能です(短期〜中長期、応相談)。またJapan Dystonia Consortiumの主幹として研究基盤を構築しています。

【神経画像】
 ジストニアやパーキンソン病など運動異常症、アルツハイマー病などの認知症疾患、ALSなどの画像解析を通じて、病態解明や新規診断法開発に取り組んでいます。脳MRIのネットワーク解析を主眼としています。医学生や大学院生の研究指導も行っており、彼/彼女らが筆頭著者の論文も発表しました。画像や研究に関心のある方を歓迎しています。

【脳卒中】
 脳神経内科が「わからない、なおらない」と言われたのは昔の話で、新しい知見や治療法が日進月歩で開発されています。なかでも劇的なパラダイムシフトを遂げたのが虚血性脳卒中です。2015年に機械的血栓回収療法のEvidenceが確立され、それまでなすすべがなかった脳主幹動脈閉塞の患者さんが、治療が早ければ後遺症を残さず回復することも可能になりました。脳神経内科医も脳血管内治療に専門的に取り組める時代です。なにより自分の手技で直接、患者さんを救うことができるのは、医師としてたいへんな充実感や喜びがあります。我々の施設には脳神経内科専門医かつ脳神経血管内治療指導医も在籍しており、脳血管内治療医になることも可能です。

【神経生理】
 電気生理のみならず神経筋超音波の研究に力を入れています。2023年にはALSの早期診断における超音波の有用性を報告しました(Clin Neurophysiol)。神経遺伝学チームや、他施設の神経筋疾患専門チームとも盛んに交流しています。

【神経免疫】
 重症筋無力症の臨床研究や神経免疫の希少難病の疫学調査を中心に取り組んでいます。2023年にはStiff-person症候群の全国調査の結果をNeurology N2誌に報告しました。また学内の免疫系研究室と共同で基礎研究を継続しています。

【遺伝情報医学】(連携教室)
 ゲノムDNAやRNAを解析することで神経変性疾患の病態解明を行っています。神経変性疾患のみならず多くの神経疾患を対象としており、遺伝子から治療に結びつくような成果を目指して研究をしています。

【その他】
・季節性運動異常症?
 春になると町中で太鼓や笛、三味線の音が聞こえるようになり、その周りで、両手を挙げて、踊っている人たちがみられます。「手を挙げて、足を運べば阿波踊り」といわれる阿波踊りです。我々も毎年参加し、楽しんでいます。皆さんも参加してみてはいかが?

・高血圧には注意?
 徳島名物なのがラーメンです。豚骨醤油味のスープに、生卵、豚バラ肉が乗ったラーメンで、一度食べると病みつきです。

・自然
 海、山、川、いずれも徳島市から近く、いろいろなアクティビティで遊べます。そこで取れる食材を使った料理は最高です。